ミナトホテルの裏庭には 寺地はるな

祖父から大正末期に建てられた宿泊施設「ミナトホテル」の裏庭の鍵探しを頼まれた芯輔。金一封のお礼につられて赴いた先は、「わけあり」のお客だけを泊める、いっぷう変わったところだった。さらには失踪した猫も捜す羽目になり・・・。

私はホテルが好きです。自分の家にはないワクワクする異空間。知らない土地があっとゆう間に自分の住処になる。たま〜に家にいたくない時は職場の近くの機能性重視のビジネスホテルを利用するのですが一泊するだけですごく気分転換になります。なぜかホテルで食べるコンビニ飯って美味しく感じるのは私だけでしょうか?

ミナトホテルには訳ありで辛い悩みを持った人たちが泊まりにきます。人によって「辛い」の度合いは違います。自分がすごく辛いことでも相手には大したことない。みたいなことってあるとも思うんです。人の辛さを決めつけて何かアドバイスして相手の気持ちに寄り添った気になっている自己満足な人はたくさんいると思います。この話を読んでいて私も気をつけなくてはと思いました。100%相手の気持ちを理解することなど不可能なのだから下手に深入りはしない。とゆうのは得策だなと思いました。

あと誰かのために本気で怒れるって素敵なことだなと思いました。

あしたから出版社 島田潤一郎

本当は就職したかった。でも、できなかった。33歳のぼくは、大切な人たちのために、一編の詩を本にすることに、出版社を始めることを決心したー。心こもった良書を刊行しつづける「一人出版社」夏葉社(なつようしゃ)の始まりから、青春の悩める日々、編集・装丁・書店営業の裏話、忘れがたい人や出来事といったエピソードまで。生き方、仕事、文学をめぐる心打つエッセイ。

根本にある想いがブレない、一切妥協しない、本が大好きなこと、だから潰れず10何年もつづけることができるのだな。と、商売を一からやっていく厳しさと楽しさとドキドキワクワクが詰まった作品でした。

文字からリアルが伝わってくる。エッセイを読んで震えて泣きそうになったのは初めてです。こんなに苦労してできた本は良い本でないわけがないなと納得。

これから出版社をやろう!と思っている方は絶対読んだ方が良いです。何から始めていいのかわからないとか、仕事は一人では何もできないってこととか苦労したことがリアルに綴られていて参考になりまくりです。と同時に、うわ〜これは私にはできないわと、見切り発車防止にもなると思います。実際私はなりました。笑

私も常々一人で仕事がしたいなと思っていて、でも完全に一人で仕事をするなど100%無理な話です。必ず人と関わっていかなければならない。はぁ、、、。

当分は関わって仕事していきます。。。

 

百万円と苦虫女 タナダユキ

ひょんなことから前科者になってしまった鈴子は、どこにいても所在がない。ならば所在そのものをなくしてみよう!そんなネガティブかポジティブだかわからない発想から「百万円貯めては住処を転々とする」ことを決め、旅にでた鈴子。彼女を待ち受けているのは・・・。うまく生きられない女の子の、ほろ苦くも優しい気持ちになる恋の物語。

私のバイブルでもあるこの作品。これを超えるお話は未だ出会ったことがありません。

最初の出会いは映画でした。当時蒼井優が大好きでこの作品を見ました。物語の色とか流れる時間にどんどん引き込まれていき蒼井優の魅力が存分に放たれている作品でした。一回では見足らず何回も見直し、ついにはDVDを購入!その後映像では飽き足らずこの小説も購入!今まで生きてきて原作&DVDまで買った作品はこれだけです。

原作では映画ではなかった春夫と中島君のバックグラウンドや鈴子が3万円の高級宿で自殺者と勘違いされるエピソードなんかが書かれていて、この作品の深い部分がわかってさらに好きになりました。

買った当時、主人公・鈴子の気持ちにドンピシャにハマったのと100万円貯めては住処を転々とするスタイルに私もこんな生活したい・・と本気で思っていました。(実質可能ではあるがやる勇気はなかった・・)

平成24年初版発行になっていたのですが令和4年に読んでも全く色褪せることのない作品でした。当時は鈴子みたいな生活に憧れていたけど今読んでみたら賃貸を数ヶ月で解約するのって勿体無いよな〜とかマンスリーレオパレスにすればいいのに〜とかバイト急にやめてみんなに迷惑かけるよな〜とかそもそも住所変更どうなっとん?!とかリアルなことばかり考えていてクソつまらん大人になってしまった。と悲しくなりました。笑

あぁ、もう一度あの頃の自分にもどりたひ。

 

 

その日のまえに 重松清

僕たちは「その日」に向かって生きてきたー。昨日までの、そして、明日からも続くはずの毎日を不意に断ち切る家族の死。消えゆく命を前にして、いったい何ができるのだろうか・・・。死にゆく妻を静かに見送る父と子らを中心に、それぞれのなかにある生と死、そして日常のなかにある幸せの意味を見つめる連作短編集。

これは電車では読めません・・。何度涙を我慢したことか。

大切なひとが余命宣告されるとゆうことはどんな気持ちなのだろう。残される家族は確実に死へ向かっていく毎日をどう生きていけばいいのだろう。どうやって向き合っていけばいいのだろう。ずっと泣いている訳にはいかない、とゆうのは分かる。だけど会うたびにその人との日々を思い出して泣いてしまいそうだな・・・(今これを書いてるだけで泣きそうになった)

残される自分は大切な人のために一体何ができるのだろうか。どんな言葉をかければいいのかわからないな。残りの時間はどんなふうに過ごしたいのだろう。

例えば自分が余命半年と言われたらどうだろう。残りの半年はどう過ごしたいかな。とりあえず残される家族には一切迷惑をかけなようにしたい。あと疎遠になってしまった友達に会いたいけど死に際に会いに来られても困るよね笑。あとは・・・意外とやりたいことってないかもしれないな。(大体半年ではできないことはやり残している。あと大金がないとできない)

今元気にご飯を美味しく食べれてすやすやお布団で寝れてお風呂に入れること。これらが当たり前にできている毎日はとても幸せで尊いことなんだと思います。これ以上の幸せってないよな。

ビタミンF 重松清

38歳、いつの間にか「昔」や「若い頃」といった言葉の抵抗感がなくなった。40歳、中学の息子としっくりいかない。妻の入院中、どう過ごせばいいのやら。36歳、「離婚してもいいけど」、妻が最近そうつぶやいた・・・。一時期の輝きを失い、人生の”中途半端”な時期に差し掛かった人たちに贈るエール。「また、がんばってみるかー」心の内で、こっそり呟きたくなる短編七編。

40歳=おっさん。いやいやまだ若いよこれからだよ!!と思ってしまうのは私だけでしょうか。私は現在34歳なのでもうすぐ仲間入りを果たす年頃なのですが心はまだ追いついていないです。(多分未婚子無しだから余計)

この物語に出てくるアラフォー男子ズはオヤジ臭がすごい伝わってきてなんだかとても切ない。結婚して子供も健全に育って毎日健康に仕事ができていることの幸せは前提とてこの平凡な毎日にまだ何か求めている。(贅沢だな全く)

なぎさホテルにてとゆう話に出てくる夫婦の話の中で妻がただ歩いているだけでイライラするようになった。と書いてあってなぜこうなってしまうのかなと考えた。やはり夫婦といえど他人、同じ屋根の下で何十年暮らしていると相手の嫌なところが目立ってやがて嫌なところしか見なくなってなんだか嫌になってしまう。無意識に嫌いになる理由を探しているのかな。まるで親に対する思春期の子供が思い浮かびました。

俺が求めていた人生はこんなものじゃなかった。今の妻とは別の人と結婚していたらもっと違う人生があったのではないか。あったかもしれないけど、今より幸せになっていた補償はないですよね。こうゆうひとって何をしてもずっと後悔し続けるんじゃないかなとも思う。現在の自分に満足できないからもっと違うことをしてみようの繰り返しな気がしてならない。なら一層独りで暮らすのが良いと思うよ!と言ってあげたい。

アヒルと鴨のコインロッカー 伊坂幸太郎

引っ越してきたアパートで出会ったのは、悪魔めいた印象の青年。初対面だというのに、彼はいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と持ちかけてきた。彼の標的はーたった一冊の広辞苑!?そんなおかしな話に乗る気などなかったのに、なぜか僕は決行の夜、モデルガンを手に書店の裏口に立ってしまったのだ!

この作品は学生の頃、映画が観てすごく良くて内容ははっきり覚えてないけど浜田岳がボブディランを歌っているところにそれを後ろで聞いていた瑛太が話しかける最初の出会いのシーンがまだ頭に残っています。アヒルと〜を見るとボブディランの歌声とあのハーモニカ?の音が流れてきてこの感情は今でいうエモいが当てはまるような気がします。2000年代の映画を見るともれなくエモいと思ってしまうのは多分学生の時に見たのでその記憶も一緒に放出されるからだと思います。まだ画質があまり綺麗じゃない所もいい。

実は原作を読むのは初めてで(何せ当時は本を読む習慣がなかったもので)内容を知って読むので新鮮さはないけど多分ネタバレせずに読んだらもう一回読まないとわからなかったかも。多分え?は?ってなってたと思います。現在と二年前の話が交互に展開されていって最後に現在の話で混ざり合っていく。こんなお話が書けることに嫉妬しました。天才!!

楽園のカンヴァス 原田マハ

ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンはある日スイスの大邸宅に招かれる。そこで見たのは巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵。持ち主は正しく真贋判定(しんがんはんてい)したものにこの絵を譲ると告げ、手がかりとなる謎の古書を読ませる。リミットは7日間。ライバルは日本人研究者・早川織絵。ルソーとピカソ、二人の天才がカンヴァスに籠めた想いとはー。

私は絵画のことは全くと言って素人なのでルソーとピカソの絵がどれだけ価値のあるものかとゆうことは分かるのですが、なぜどうしてとゆう理由はよく分かっていません。ピカソの有名な絵「ムンクの叫び」を見るとこれは上手なのか?と思うことは人生で一度はあると思うのですが、実はピカソは子供の時から超絶に絵が上手かったらしいのです。あのムンクの叫びは超越した作品とゆうことなのですね。かっこいい。

この本を読んでキュレーターとゆう仕事を初めて知りました。学芸員とはまた違うようで、美術館などの企画・管理者にあたるもので、施設の収集する資料に関する鑑定、研究、学術的専門知識をもって管理監督を行う専門管理職。とゆうことで美術館でのキュレーターは絵画の博士と言ったところでしょうか。絵に多大なる情熱と愛情を持っているキュレーターを見ていると(読んでいると)普段行かない美術館に足を運んで見ようかなと思わせてくれる。画家について前知識があるともっと美術館が楽しいものになるのではないかと、有名すぎてなんか知らんがなんかすごい人になっている天才ピカソのバックグラウンドはきっと調べると面白いはず。