旅する木 星野道夫

広大な大地と海に囲まれ、正確に季節がめぐるアラスカ。1978年に初めて降り立った時から、その美しくも厳しい自然と動物たちの生き様を写真にとる日々。その中で出会った先住民族の人々や開拓時代にやってきた白人たちの生と死が隣り合わせの生活を、静かでかつ味わい深い言葉で綴る33篇。

冒頭の『どうしようもなく些細な日常に左右されている一方で、風の感触や初夏の気配で、こんなにも豊かになれるのですから。人の心は、深くて、そして不思議なほど浅いのだと思います。きっと、その浅さで、人は生きていいけるのでしょう。』とゆう星野道夫さんの人柄が垣間見れる文章は優しい気持ちにさせてくれる。と同時に大自然に飛び出したくなるような躍動感があります。

子供時代にオーロラを見せてあげたらこの子たちが大人になった時この景色がどのように影響を受けるのだろうと思いを馳せておられる場面があり自分自身も学生の時に漠然とオーロラが見てみたいとゆう夢があったことを思い出した。それを見せようとしてくれる大人がいたんだなと思ったら私はもっと子供の時にたくさんの経験ができたのではと思った。うちの親はそうゆうことには興味がなかったようで触れる機会がなかったのですが星野さんのような方と巡り会えていたら自分人生は全く違うものになっていたなと思う。

この本を読んでいると未知の世界である外国の大自然をこの目で見たくなります。移住への憧れもまだ捨てきれないなと思いました。

 

 

 

とにかくうちに帰りたい 津村記久子

うちに帰りたい。切ないぐらいに、恋をするように、うちに帰りたいー。職場のおじさんに文房具を返してもらえない時。微妙な成績のフィギュアスケート選手を応援する時。そして、豪雨で交通手段を失った日、長い長い橋を渡って家に向かう時。それぞれの瞬間がはらむ悲哀と矜持、小さなぶつかり合いと結びつきを丹念に綴って、働き・悩み・歩き続ける人の共感を呼びさます六篇。

まずタイトルの”とにかくうちに帰りたい”は社会で働いている人は必ず思うであろう気持ち。会社で嫌なことがあって日は特に早く帰りたいですよね。

仕事から帰っておかえりを言う相手がいなかったとしても(いたら尚良い)自分の家は癒しでしかない。なんと言っても自由ですから(一人暮らしの場合)それはもう帰宅の道中から始まっています。コンビニに立ち寄っておつまみとお酒を買うとゆうイベントをこなし帰宅したらまずお風呂に浸かるでもよし、楽しみにしているアニメやドラマを見るでも、ゲームの中に没頭するでも良し、とにかく楽しいことしかない空間なのです家とゆうものは!!

これがあるから日々のなんとも言えないモヤモヤと戦っていけると言っても過言ではない。こうゆう小さな幸せで人は生きていけるのです。

金の角持つ子供たち 藤岡洋子

「サッカーをやめて、塾に通いたい」小6になる俊介は、突然、両親に打ち明ける。日本最難関と言われる中学校を受験したいのだ、と。難聴の妹・美音の小学校入学を控え、家計も厳しい中、息子の夢を応援することを両親は決意。俊介の塾通いが始まる。だが、彼には誰にも言えない”秘密”があって・・・。

読んでいてずっと俊介のことを応援していたのと同時に自分の学歴コンプレックスが少しばかりあるな〜と実感されられました。学生の時は勉強が苦手で目を背けるばかりで今になって後悔しています。学校の勉強が社会で役に立たないなんて大嘘です。内容自体は使わないかもしれないけど、勉強で問題を理解することや記憶することは社会に出て大いに役に立つしそれを学生時代にサボっていた私は社会に出た時に少しスタートが遅れているように思ったことがありました。

「勉強=武器」この武器は大人になってずっと自分の味方になってくれるもの。最近になってやっと勉強をすることへの大切さを知ったのでこの本に出会えたタイミングが良かったなと思いました。多分20代の頃の私は遊ぶことが一番になっていた時なのでこれを読んでもあまり響かなかったと思います。

これから自分の子供がどんな未来を生きてほしいか。を真剣に考えている親御さんや学生の時に勉強しなかったことを今後悔している方はぜひ読んでいただきたい。ものすごく力をくれるお話です。

エミリの小さい包丁 森沢明夫

恋人に騙され、仕事もお金も居場所さえも失った25歳のエミリ。十五年ぶりに再開せた祖父の家に逃げ込んだものの、寂れた田舎の海辺の暮らしに馴染めない。そんな傷だらけのエミリの心わ救ったのは祖父の手料理と町の人々の優しさだった。カサゴの味噌汁、サバの炊かず飯。家族と食卓を囲むというふつうの幸せに触れるうちに、エミリにも小さな変化が起こり始め・・・胃袋からじんわり癒される、心の再生を描いた感動作!

なんと言ってもエミリのおじいちゃんがとんでもなく素晴らしい人です。80歳にして掃除洗濯はもちろん料理は上手だし車の運転もするし釣りのやり方も教えてくれる。理想の祖父とはこの人のことを言うのではないだろうか。そしてエミリの一番の味方でいてくれます。エミリが田舎にきた理由を村じゅうの人が何十にも盛られた噂話を陰でコソコソと言う輩におじいちゃんは「あんたたち、もしよかったら、エミリの友達になってごらん。そうしたら、本当は、どんなに心がまっすぐでやさしい娘か、よくわかると思うよ」とエミリの前で言ってくれる場面があるのですが、泣きそうになってしまいました。エミリにはこんなに強くて優しい味方がいるのかと心が震えました。

孫娘ではあるが15年も会っていなかったのにこんなに温かく迎えてくれるのはやはり家族の絆があるからだとおもいました。何があっても可愛い孫娘なんだろうな。

 

 

この世にたやすい仕事はない 津村記久子

「一日コラーゲンの抽出を見守るような仕事はありますか?」ストレスに耐えかね前職を去った私のふざけた質問に、職安の相談員は、ありますとメガネをキラリと光らせる。隠しカメラを使った小説家の監視、巡回バスのニッチなアナウンス原稿づくり、そして・・・。会社という宇宙で心震わすマニアックな仕事を巡りつつ自分の居場所を探す、共感と感動のお仕事小説。


お仕事小説が好きで面白そうなのがあるとすぐ手に取ります。この物語に出てくる仕事は今まで聞いたことのない、こうゆう仕事があるのかとゆうお仕事ばかりで興味をそそられまくりました。小説家の監視のお仕事は本当にあるのならば私もやってみたいと思いました。その名の通り小説家の自宅に監視カメラで撮影し録画したものを不審な点がないかチェックし報告するとゆう内容のお仕事。これって犯罪じゃね?と思うのですが

監視する理由がちゃんとあるのです。その時を迎えるために主人公は監視を続けるのですが、監視されている小説家がある日カメラの方向を何度も振り向く素振りをするとゆうことが続きもしやカメラに気付いた?のかと主人公が翻弄される部分があって笑えた。ちゃんとオチもあります。(ネタバレが嫌なので言いません)

YouTubeでも生活ルーティンをあげて再生回数を伸ばしている人がたくさんいるのでやはり他人の生活を覗くことには需要があるのだと思います。

それを小説家や漫画家のルーティンなんてみたいに決まっている。(私は見たいです)

このお話に出てくる仕事は地味なことばかりなのに全てドラマチックに書かれていて全然地味じゃなくワクワクハラハラさせられます。

今までに読んだことのないお仕事小説を読みたい方はとてもおすすめです。

太陽のパスタ、豆のスープ 宮下奈都

結婚式直前に突然婚約解消されてしまった明日羽。失意のどん底にいる彼女に、祖母のロッカさんが提案したのは”ドリフターズ・リスト”の作成だった。自分はこれまで悔いなく過ごしてきたか。相手の意見やその場の空気に流されていなかっただろうか。自分の心を見つめ直すことで明日羽は少しずつ成長してゆく。

明日羽の周りには祖母のロッカさん、幼馴染の京ちゃん、同僚の郁ちゃんと皆、明日羽のことをよくわかっている人たちがいます。婚約解消とゆう立ち直れそうにない出来事が起きてもこの人たちがいれば心強いと思いました。私にはこんな存在いたかな〜と途方に暮れました・・(寂しいとか言わないで・・)

そしてこの物語の要、”ドリフターズ・リスト”。いわゆるやりたいことリスト的なものだけど、私も昔書いていました。だけど最初のうちは張り切って行動を起こすんだけど1ヶ月経つ頃にはその存在すら忘れている状態。意味ないですよね・・

あとこうゆうのを書くぞ!と意気込んでも大体やりたいこと自体がなかったりします。(トホホ)20代のころは結構スラスラ出てきた(経験が少ないから)けど30代も半ばに差し掛かるとほぼ経験済みか無謀なチャレンジ(弁護士を目指すとか医者を目指すとか)になってしまいます。

美味しいご飯を食べる。とか旅行に行く。とかは1人ではなく一緒にいて楽しい誰かと行きたいのでそれはそれで難しいのです。この誰かと一緒に行く相手はとても重要ですよね。誰でも言い訳ではない。この相手次第で旅行は最高にも最悪にもなるし、食事は美味しくも不味くもなります。こう考えた時にその逆も然りですね、自分も後者な存在になっているかもしれない。気をつけよう。

一緒にご飯を食べると幸せにな友達(男女問わず)を見つける。ってどうでしょう。これこそ無謀かしら。

明日羽はドリフターズ・リストをきっかけに行動を起こして自分の至らない部分に気づけて成長できたので、今の自分に疑問を抱いている人はぜひおすすめです。

 

 

 

水曜日の手紙 森沢明夫

水曜日の出来事を綴った手紙を送ると見知らぬ誰かの水曜日が届くという「水曜日郵便局」。主婦も直美は、職場や義父母との関係で抱えたストレスを日記に書き出すだけの毎日を変えたいと、理想の自分になりきって手紙を出す。絵本作家になる夢を諦めて今後の人生に迷っていた洋輝も、婚約者のすすめで水曜日の手紙を書くことに。不思議な縁が交差した2人の手紙は、かかわる人々の未来を変えていくー心あたたまる奇跡の物語。

どうしても将来が不安で自分の夢に挑むことを躊躇してしまう人はたくさんいて、もし世の中が変わって政府から”将来の生活は保障されているのでどうぞみなさん自分の好きなことを仕事にしてください夢は諦めないでください”とゆうルールができたら皆さんはどうしますか?

やりたいことへの妨げになるもの(時間やお金など)が何も無くなった時、人はちゃんと行動できるのだろうか。夢を叶えることができるのだろうか。

その人のやる気の度合いとこのまま人生が終わるなんて嫌だとかそうゆう強い気持ちとちょっとしたきっかけで人は行動を起こすのではないかと思います。

気持ちが備わっていてもう少し勇気が欲しい方はぜひ「水曜日郵便局」にお手紙を出してみてはいかがでしょうか。私もこの物語を読んで手紙を出してようと思った1人です。こうゆう行動から未来が変わっていくと信じて今から手紙を書こうともいます。

と、思ったのですが時既に遅し、どうやら閉局しているようです。こうゆう素敵な取り組みは生涯続いてほしいものですよね・・・。本当に残念。もっと早くこの本に出会っていれば良かったな。